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『ステレオサウンド』(以下、ステサン)の最新号を書店で立ち読みしました。その感想を好き勝手につらつらと書きます。正直申し上げて、ブログだから好き放題言ってしまってもいいだろう!という浅はかな魂胆です。
まず始めに少し前のこと、某誌の編集部に立ち寄ったら、その《ステサン》が置いてあって、時間がなかったので最初の方のページだけペラペラとめくり、「いい音を身近に」なんて特集タイトルが。そしてカット写真などを見るにつけ、「あれ、どうもいつもの《ステサン》じゃないっぽいな…」と思ったのです。オーディオ誌にそろり関わっている私でなくとも、両誌を読み比べている方なら、これは大抵分かる《ステサン》の変化だと言えるでしょう。
随分とオフェンスラインを下げてきたな、「一見さんお断り!ド素人の入室を禁ずる!」の神々しい看板を下ろして、鉄のカーテンを開くというのか?これまでのステイタスに立脚するばかりでなくて《ステサン》も変わろうとしてるんだな、いやはや《ステサン》もまた雑誌不況で悩んでいるのだな、と私の眼には映りました(決して揶揄しているのではありません、あしからず)。
するとここに今の《ステサン》の悩みどころが記述されてあって、実に苦しい立場を吐露している。とても率直な告白、アウトプットだと感じました。何と言っても業界のオピニオン誌的存在な訳です。これまでのオーディオ文化を、ある部分《ステサン》が引っ張って来たということに異論を唱える方はそう多くはいないでしょう。そういう雑誌が悩みを披露するのは、相当に勇気のいる決断だったように思います(私もこういうことをブログとはいえ、アップするのは少しの勇気が要りますが…)
つまり《ステサン》の悩みは雑誌、新聞といった活字メディア全体の問題でもあるのです。特にその業界でオーソリティーな位置を占めている媒体ほど、その地位低下が激しいのではないか。雑誌が売れない、雑誌で取り上げても商品がそもそも売れない、広告が減る、部数も減る、ブログなどインターネットが氾濫させる情報過多によって相対的にその地位が脅かされる、低下する、引き摺り下ろされる…、まったくもって負のスパイラルです。
一体どうしたら雑誌メディアは存続し得るのか?
私の考える打開策は、劇的な世代交代です。だから《ステサン》さん、私みたいな新参ライターを使うべきです!などと具申したい訳ではなくて(笑)、私なぞでなくてオーディオ専業に近い形のライター陣は少しはいる訳で、そういう人材を大いに使って大胆にこれまでの雑誌像を打ち破るトライをしてゆくことが必要なのではないかと思います。
変わることに躊躇していると、いつのまにか時代の波に呑み込まれて海のモクズと化すほかないのが雑誌、そしてまた新聞といった活字媒体が置かれた状況です。
とにもかくにも新陳代謝を行っていかなければ雑誌の未来はないのではないか。また個人的な意見としては、オーディオライターでなくても文筆のできる人なら誰を使ってもよいのだと思います。要するに文章が書けて、確かな視点を持っている人なら、もうそれでOKに違いないと。
だから《ステサン》の最新号が、芥川賞ほか各文学賞を受賞されていて早稲田大学の教授でいらっしゃる堀江敏幸さんや、同じく慶応大学で教鞭をとられるクラシック音楽評論家の許 光俊さんに執筆を依頼されているのは大変に“あり”だろうと思うのです。
お二方となれば、ややもすると「『考える人』誌(新潮社刊)と見間違うやないかい!文芸誌かいな」となる気もするのですが、製品の技術解説の傍ら、一方で徹底して良質な寄稿を読ませようというスタンスには好感を持ちます(生意気に恐縮なのですが)。先々に向けた息吹みたいなものを感じます。オーディオ評論の諸相の中で、一分野として文芸化が進んでいくことに私は大賛成です。
* * * * * *
今回は実に勝手な雑誌批評、個人的な提案になりましたが、オーディオ誌にせよクルマ雑誌にせよ、どの雑誌も個性が誌面にアウトプットされていて、お互いの競争が激しいのが最もよい状態と私は信じて疑いません。
《過去の投稿》
●私、雑誌の味方です
●私、雑誌の味方です《その2》~二玄社『NAVI』最終号~
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