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 オーディオユニオンのストアブログを見ていたら、オルトフォンの廉価な電源ケーブルが出ていたので買い求めた。PSC-3500XGシルバー。名前は大仰だが、中古で約1万円だからとても財布に優しい。思えば1ヵ月半くらいまえに電源ケーブルの“U-19”的代表選手、PSC-4500というのを取り入れようと考えたのだった。(→7月6日付けブログ『良きチームに良きスカウトあり』)

 "3500”と“4500”。まあ大体一緒ではないか。乱暴ではあるが、そう考えた。いや考えることにしたのだ。そのくらいの丼勘定は仕事で慣れっこである。ユニオンのS氏はやや不安そうな顔をしながら、試聴してもらって構わないなどと言うが、流石にド素人の僕でも1万円という値段の電源ケーブルを借りることは、ユニオンに失礼なのではないかと思った。だから買ったのであるが、S氏の悪い予感は見事に当たった。

 マイルスのトランペットは、ペラペラと薄っぺらく耳障りになってしまった。いくらなんでもこれはまずい。我が布陣に適していないのは明白だった。今回のテーマはフォノイコの電源ケーブルである。

静寂の間_190825_2


 どこの誰に頼るか。TMDのホームページを見ると、一体これでこの夏何回目かというサマーセールを開催していた。電源ケーブルで廉価なやつがいくつも出ている。この助け船に乗ることにした。値段が安いからといって、適当にチョイスすると手痛い目に逢うことを学習したので、TMDの畑野氏に電話をしたところ、親切に相談に乗ってくれた。誠にもってユーザーフレンドリーな会社だ。ガレージメーカーとはいえ、消費者や読者から入る問い合わせに、いちいち答えるというのはとても骨の折れる作業である。

 畑野氏によれば、フォノイコは情報量の多いアンプであって、単線が良いのではないかという。オルトフォンの3500はおそらく単線ではないのではないか、との指摘もあった。オルトフォンは銀線を使っているから”シルバー”の名を製品名に入れていることは分かっても、撚り線なのか単線なのかは知らなかった。ユニオンに技術的な説明を求めるだけの知識、教養を持っていないことは、誠に悲しい。だが、途方に暮れるばかりでも仕方がない。

 畑野さんに3種類の電源ケーブルを送ってもらうこととした。以下に僕なりの拙い『翻訳』を記す。(※『翻訳』→8月27日付けブログ『不実なパワーアンプか貞淑なプリアンプか』)

▼電源ケーブル
【TMD】
・EARLY AC CABLE(1.5m)/ミリタリー的な色合いなので、以下『老兵』と略す
・超初期型(2m)/プラグにピンクを配しているので、以下『初老の恋』と略す
・NEW AG/平成11、12年あたりの製品とのことなので、以下『入社6年目』と略す

静寂の間_190825

(左前=『老兵』、右前=『入社6年目』、中後ろ=『初老の恋

▼試聴盤(LP)
①カーペンターズ/ベスト盤/『クロース・トゥ・ユー』
②マイルス・デイビス/リラクシン/『イフ・アイ・ワー・ア・ベル』・『ユー・アー・マイ・エヴリシング』

 そもそもオルトフォンは我が家では歪感があって、マイルスだけでなくヴォーカルも薄っぺらだった。繰り返しになるが、これが解決すべき課題である。

 まずはカーペンターズを聴く。

 『老兵』は、あくまでも楽曲の中心にあるのはカレンの歌声であることを主張する。真ん中に凝縮している感じだ。そして、しっかりと、かちっと歌姫の声を描写する。『初老の恋』は、僕が名付けたからなのか、とても優しい。そのかわり、『老兵』に比べて中心感は薄らいだ。全体を鳴らそうという意図もあるようだ。『入社6年目』は、『老兵』と同様に歌声が中心にある。艶かしい感じさえする。最もはっきり、くっきりとする。『老兵』と比較すると現代的で綺麗な印象で、ケーブルの個性は和らいだ。一番面白いと感じ、最適解に近いのは『老兵』だった。

 マイルスに移ると、『老兵』はさらに威力を発揮した。ミュート・トランペットは”端正”ともいえる再生音となった。楷書的とも評されるカートリッジのDL-103とのマッチングもいいように思う。

 これは彼(老兵)に決まりだ!

 勝負は決してしまったが、順序を変えて『入社6年目』をつなぐと、マイルスが艶っぽく水に濡れた感じが出て悪くないのだが、耳をつんざくようなピーキーさもある。トランペットのアタック感が強い気がする。ガーランドのピアノの快活さにも合っているのだが、やや腰高だ。『初老の恋』は、名前の通り”落ち着き”がある。”つんざく感”は『入社6年目』に比べて少ない。荒れた心をスタビライズするには良いかもしれない。

 思えばTMDのウェッブにも、畑野さんへ電話した折りにも、『老兵』の実力は折り紙つきであるということなのだった。技術的なことはよく分からないが、フォノイコは東京サウンドのPE100SEという機種で、NFBをかけずに周波数帯によって歪率が変化しないCR型としている。畑野さんが、周波数帯を整えてやることが”うんたらかんたら”と述べていたような気もする。だから両者は適合したのであろうと想像する。

 TMDのケーブルは楽しい。マニアックな要素を多分に秘めながら、子供の頃に夢中になったスーパーカーのようにラインナップが豊富で、レアものというか希少なモデルを時に入手することもできる。それぞれの製品にバックストーリーや特徴を持たせる工夫もうまく、業界で独自のポジションを得ている訳だから、大手のメーカーは見習うべき点も多いのではないか。

 予算のことは別としてSugarさんの賞賛するカルダスのゴールデンパワー(←※リンク張付け)という輩に興味津々だったが、よく思い起こせば、我がオーディオの陣容はフォノイコと47アンプをつなぐワイヤーワールド以外は、全て”日本人”揃いだ。誤解を恐れずに申し上げれば、僕は”オーディオ国粋主義”を推進しているのである。しかも没個性な大資本に頼ることを避け、小さいながらも個性豊かなメーカーの製品を積極的に登用している。外国語が不自由なため取材をする際、”日本語を話す人“が製品を作っていることも勝手がよい。いずれ卒業、転向して欧米列強国製品の軍門に下る時がやって来るのかもしれないが、いまはTMDやら47研やらコニシスやら、向こうは嫌々なのかもしれないが、電話をすれば何とか楽しいやりとりをすることのできるガレージメーカーに心惹かれているという訳だ。



静寂の間_190825_3

 CDプレーヤーにもつないで検証してみました。こちらは『入社6年目』に落ち着きそうです。これでピンケーブルとともにTMDで揃えることになります。(→8月4日付け『駄耳によるRCAケーブル試聴記』)

静寂の間_108025_4

 空中ケーブルサーカスの図。こういう風景をふと客観的に見ると、一体何をしようとしているのか自分でも分からなくなって来ます・・・。



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 それでも記しておこう。比較対象にしたのは、以下の3種類のケーブルである。

▼ケーブル
・TMD/Environment2
・TMD/白(試作品)
・Zucable/Wylde

 なぜこのラインナップとなったのか。例によってオーディオユニオンのS師匠によるご高説を拝聴し、TMD(トータルミュージックデザイン)社のケーブルを薦められたのだ。中域をがっちりとさせて、ジャズを熱気溢れる雰囲気で再生したい、などと具申すると同社の名が挙がった。ユニークな選択だと師は言う(実際は、“TMDなんかを選んでも、結構面白いとは思うんですよねえ”と仰られました)。しかも、ユニオンで見繕って手渡されたのではなく、T社から直接購入するとよい、とのアドバイスがあった(実際は、”TMDはWeb直販をしていて、僕らから買うよりも安かったりします”とのことでした)。

 一体何とまあ、しつこいようだが、実に懐の深いセールスをするというのだ。電源ケーブルだって、オヤイデに行って自分で作った方が安上がりです、とご教示を頂いた。いくら金満家の方からの出費で店の経営を成り立たせているとはいえ、これではあんまりだ。申し訳程度にオーディオの雑誌をその場で買ったくらいでは、彼には何の足しにもならない。

 もう、ここは思い切って彼の膨よかな掌の中で踊ってしまって良いのではないか、とまるで接待を受けるクライアントな気分になって来たぞ!

「じゃあ、このZucableをTMDと比較して聴いてみたいんだけど・・・」

 では宜しい、とのご宣託を得た。彼をオーディオ菩薩と名付けることにした(実際は、”ZucableはあまりITSUNIREさんの求める音の方向ではないかもしれないですが”との注釈があったからだ)。

 早速、家に帰って聴いてみる。CECの3300Rと47アンプの間に結線した。

▼試聴盤
①キャロル・キング/タペストリー/『You’ve got a friend』
②ハービー・ハンコック/ザ・ニュー・スタンダード/『ニューヨーク・ミニット』
キャロル・キング/タペストリー
ハービー・ハンコック/ザ・ニュー・スタンダード

 オーディオルームが梅雨の被害を受けて、ゆったりと比較するような気持ちではないので、この2曲と3本のケーブルをさくさくと順に組み合わせて試聴した。

Zucable_Wylde

 先ずは女性ヴォーカルからいってみよう。Zucableは、オーディオユニオンのS師匠から“現代ハイエンド的ケーブル”と紹介されていた。中域から上の高域までに伸びがあって、ここがメイン所という印象だ。低音もしっかりと出ていて、柔な床が鳴っている。しかし、中域に張りがなく、中抜けの感じだ。キャロル・キングの声(人の歌声)が中域を地盤とするからだろう、全体にまとまりがない。

 それに引き換え、TMDの入門ケーブルEnvironment2は中厚で、声に芯がある。ヴォーカルが自然だ。Zuに比べて、まとまりがある。TMDの白い試作機は、同じく中域の周辺に力が漲るのだが、E2よりもその範囲が広い。上と下にもっと広がっている。僕のメモには“音場”とある。この言葉が果たして正しいかは分からないが、中域が広まったことで、僕は“音場”を感じた。キャロル・キングの声が、やや鼻にかかったものであることを改めて気付かされる。

 お次はハービーだ。まとまりということでは、Zuが一番あった。随分と綺麗なアンサンブルだ。逆に言えば、カジュアルで軽く薄い。TMDのE2は、フンワリとした袋の中に、コンボが収容されている感じだ。

TMD_Environment2

 『ニューヨーク・ミニット』の、のっぴきならない緊迫感はあまり感じられず、やや冗長な気もしたが、演奏はうまく一つに集結させられた。

 そして、白の試作機だが、全体のまとまりには欠けた。しかし、低音は競り上がり、緊張に包まれた雰囲気が見事に再現された。まるで正方形の白いキャンバスのど真ん中に、小さく黒丸が描かれ、その1点に焦点を絞って音を投射しているようだ。

TMD_White_test_cable

 僕はTMDの白い試作機をとることにした。見た目もユニークだ。ケーブルの真ん中に、縄跳びの手を握る部分のようなものが誂えてある。一体、何が入っているのだろう。高音と低音を調整するという。TMDからの書面には、製品名も使われた素材についても、何も記載がない。ただ試作品とあるだけだ。販売するとしたら、10~12万の物だが、プラグの変色、スリーブの黄ばみ、曲げ癖により、とてもリーズナブルなサマーセール価格に設定されていた。

 TMDの畑野さんに電話をすると、5年ほど前に『ユーロヴィンテージ』と共に製作したのだという。それ以外には情報がない。

 いや、いいではないか。何者か出自は分からないが、腕は立つフランス外人部隊的ケーブル。昔のジャズは、多くは怪しい連中が演奏していた訳だから、それにふさわしい。

●追記

 ユニオンのS氏へ、電話で申し訳ないけれども、Zucableは(予定通り)お返ししますと言って、上記を掻い摘んで伝えると、楽しそうに“やっぱりそうですよね、TMDを選ぶと思ってました”と明るく返事があった。音の特徴という、とても抽象的で主観的な内容がゆえ、自分の教えることに生徒が理解を示し、進路指導に従ったことが嬉しかったのだろう。だんだんと共通言語の語彙が増えつつある。良きことかな。


耳鼻科190801

 耳の具合が気になっていたので、耳鼻科へ診療を受けに行った。先日記した通り、福岡への出張の折に飛行機に乗り、離着陸の高度差によって航空性中耳炎となったからだ。

 お茶の水にある耳鼻咽喉の専門医、K病院はとてもユニークな病院である。治療の仕方についてではなく、待合室に工夫が凝らされている。なんと床の下に鉄道模型が埋め込まれているのだ!

 子供達が診察を待っている間、退屈しないように配慮したのだろう。もしくは、オーディオにはまった人間が、実は大して耳が良くないという検査結果を知り、落ち込む気持ちを慰めるためなのだろう。

 まあ予想はしていた。家人と会話をする時に、僕は何度も聞き返す。キッチンで魚か何かを包丁で捌きながら、こちらに対してでなく、まな板に向かって声を発する家人を叱責したりする。

 「人と話をする時は、相手の顔を見るものだろう」

 はっきり言って難癖を付けている以外の何物でもない。飯を供給してもらうために料理を一任しているというのに、“こっちを向いて話せ”とは乱暴なものだ。家人にしてみれば、“お前がこちらの近くに来い”という気分だろう。駄耳によって随分と家人に迷惑をかけてしまっているという訳だ。

耳鼻科190801_2

 それが聴力検査によって、医学的に証明されてしまった。耳の聴こえについて正常の範囲内である、との医師の説明はあったが、検査結果の用紙には“ナントカ難聴”などと記されていた。耳管の機能が高くないということらしい。故に、耳抜きを自在に行うことはできない。加えてアレルギー性鼻炎も悪さをしている。口と鼻と耳は、当たり前だが繋がっているのだ。鼻が駄目なのに、耳が良い筈がない。

 ポンコツ耳を抱えながら、家人と日々会話をしてグッド・リレーションシップの実現を願い、少しでも良い音を聴きたいとオーディオケーブルの比較なぞをしたりする。
 
 土台、無理のある話なのだ。高価なオーディオ装置なんかより、いっそハイスペックな“人口耳”にでも取り替えた方が、よっぽど費用対効果はいいだろう。いや、最も劇的な効用のあるオーディオアクセサリーに違いない。そしてこれは僕にとってだけ、ということでもなさそうな気もする。


石匠運慶_御影石


 オーディオへの散財では、嫁さんにぶん殴られ、往復ビンタをかまされそうな気もするので、ビクビクしながら記す。

 6月はボーナスシーズンである。金融機関が資産運用のキャンペーンを一斉に打ち出す。世に金が溢れ出すのと花嫁が結婚式をしたがることにどんな因果があるのかよく分からないが、いずれにしても消費をしたくなる”月”である(余談であるが、ちなみに保険会社は11月を保険月とするらしい)。バリバリと、いや謙虚にオーディオアクセサリーをぼちぼち買い込んでいる。

 なかでも、嫁さんから「なぜ墓石を買うのか。自分用としてか。外のドライエリアに建立でもするのか」との責めを頂戴した、石匠運慶の天然御影石はなかなかに音が“ぐぐっ”と締まってよろしい。厚みが5cmで、一枚20kgもある。玄関から地下のオーディオ部屋へと運ぶのに、腰が抜けそうになる重量だ、“こいつは期待できる”。御影石が良いとアドバイスしてくれたのは、前述のオーディオユニオン4階のS君である。自分でも使っているという科白は、販売店員の“伝家の宝刀”だ。これを出されては、退転はできない。素直に従った。

 我がオーディオルームはコンクリート打ちっ放しで、基礎たる床は当然コンクリートなのではあるが、その上に木材としては柔らかい部類に入るパイン材のフローリングが施してある。ちょっと重たいものを置いたり、乱暴に掃除機をかけたりすると、傷が付いてしまう。デリケートなのだ。であるからして、対策を講じる必要が多分にある訳で、オーディオアクセサリー誌でお褒めに預かっていたABAという新興メーカーの薄型ボードに、その推奨するKRYNAのマグネシウムインシュレーターをもってしてスピーカーを置いていたのだが、どうも低音の出が悪い。47研の小柄で小粋なスピーカー、Lensはフルレンジだから、ロウ(LOW)を厚く出来させるのは難しいのかもしれないが、“こんなもんじゃないだろうな、このスピーカーの実力は”と思っていた次第だ。

 足場をがっちりと固めるということは、床が鳴かなくなる。さすれば、音が締まる。ただ気をつけねばならないのは、床が震えない以上、床をも鳴らして豪快に低音を出すということには、決別せねばならない。少しだけ迷ったが、やはり挑戦は必要だ。御影石で、バシッとした音にしようではないか。

 苦労して自作したオヤイデの電源ケーブルともあいまって、音がちょっとノーブルになった気がする(プチ・ノーブルな気分!)。やはり散財しないと音の進化を遂げるのは難しいことかな。


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男性
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