●DVDレコーダー

　このGWは五味康祐レコードコンサートに出席したりはしているが、どちらかというとオーディオというよりもヴィジュアルに目が向いている。東芝のVARDIAというDVDレコーダーの下位モデルを購入して、遅ればせながら地上波デジタル放送を視聴しはじめた。自宅を作った二年半前にすでに地デジに移行することは判明していたから、アンテナはVHFに加えて、UHFそしてCS110度アンテナをあわせて設置している。しかし何だかんだと延ばしてしまって、機器の導入に至っていなかった。

　が、一度地デジの明瞭な画質とHDレコーディングの便利さを体感したら、抜け出せなくなる。チューナーを内蔵していない旧式のブラウン管テレビでも、充分にアナログとの違いが分かる。一日中CSの体験無料放送で海外のスポーツ番組を堪能している。当たり前だが、スポーツ好きには衛星放送の放映番組というのはたまらない。つい先日から、テニスではATPツアーで世界ランク1位のナダルと3位のジョコヴィッチの決勝がイタリアで行われた模様に釘づけになり、アメリカの高校バスケットボールチームを追ったドキュメンタリータッチの前後篇をチェックし、インディー500やらイギリスのラグビーリーグ戦やらプロレスのWWE、はたまた映画はスターチャンネルで予約を入れまくり（一昨日は『インファナル・アフェアー』を見た）、LaLaTVやWOWOWで海外連続ドラマをチラチラと見て、まったくもって時間が足りやしない状態だ…。

　何より面白いのは、日本ではむろんほとんど放映されない上述のスポーツが、当地ではとても盛り上がっている様を垣間見れることだ。人々がスポーツに熱狂している。世界同時不況でみな元気を失っているかと思いきや、各スポーツのスタジアムは人で埋め尽くされていて、どうも世界中が活力を失っているように勘違いしていたのは、例えばウォールストリートとかロンドンの金融街とか、世の報道から、ある側面しか目にしていないからであるように思う。当然スポーツを取り巻く環境も不景気に無関係ではないのであろうが、観衆の熱気からはそんなことは感じられない。不況時に文化スポーツイベントは財布にも手軽がゆえに強いと言われるが、どうにも日本の場合は全体の雰囲気として縮こまって委縮してしまっているように見受けられる。世界では、様々なスポーツでプレーヤーも観客も、こっちが心配になるくらいの熱闘と応援を繰り広げているようだ。

　いま日本で熱くてたまらないスポーツというのが、野球にせよ、サッカーにせよ、それ以外の競技にしても存在しているだろうか。いや、スポーツに限らず我々聴衆が心から熱狂するような事柄が存在し得るのだろうか。

激闘、死闘、新たな芝の王者誕生！

　一体何という試合だ！テニスの世界ランク第1位のフェデラーと2位のナダル。フェデラーの全英オープン6連覇の夢を打ち砕いたのは、ナダルであった。
　
　激闘、死闘、両雄一歩も引かず、試合が終わったのは日本時間で午前5時20分。いや、私の寝不足などどうでもよい。
　
　鬼気迫るとはこのことだ。間違いなく歴史の残る名勝負となった。第一セット、第二セットとそれぞれ6-4でナダル。この後、試合はもつれ、何と第三、第四セットはともに7-6でフェデラー。勝負の行方は最終第五セットへ持ち越された。
　
　スポーツというのは世界の1番と2番が本気で戦うと、これほどまでにレベルの高い決闘、果し合いを行うのか。特に最終セットは、一打一打がこの先の生涯を決めることになるかもしれないショットにも関わらず、スーパーショットの連発だった。

　ロジャー・フェデラーはテニスの神を味方につけている。0-30とかアドヴァンテージを獲られた時にサービスエースを何度となく繰り出す。それは緊張とか気負いからは解放されている。神が彼にリラックスと自信を授けた。試合の最後のほんの2ポイントのみ見放されただけで、女神はフェデラーに微笑んでいるように見えた。

　ラファエル・ナダルはセンターコートの芝の女神よりも、むしろクレー（コート）の風神を守護聖人にしていた訳だから、このウィンブルドンでは自らの力で優勝をもぎ取ったといえる。その筋骨隆々の左腕から、強烈なトップスピンで勝利への執念を乗せてボールを相手コートへ送り込む。勝ちたいという真摯な希求はやがて、神をも蹴散らし、純粋無垢がゆえの芯の強さを∞へと昇華させた。

　久々にテニスの醍醐味を味わった。ただいまの時間、午前5時35分。興奮冷めやらない。今日はなかなか寝付けないのではないかと思う。