忍者ブログ
オーディオ、音楽、建築のほかメディア評、書評や日々の雑感など、ジャンルごった煮でお届けしています。
[3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 いま私は恥ずかしながら涙を流しながらこの文章を書いている。先日、齢を一つ重ねて四十に近づきつつあるからか、涙もろくなっているようだ。  
 
 東京消防庁による、待ったなしの状況に陥っている福島原発への放水作業を終えた現場隊長らの会見。あまり稚拙な感情論には陥りたくないが、政府もメディアも今回の原発事故を解決することはできない。これ以上の事態悪化を阻止すること、つまり国民の生命、財産を守れるか否かは、事故現場に携わる消防士、自衛隊員、警察官、東電社員、関係会社職員の努力にほとんど全てかかっている。おそらくこれが現実だろう。

 現場が実際どのような状況にあるのか詳細なところは、現場に行ってその目で確認するほか手立てがない。素人考えでは無人のラジコンカーにカメラを設置して周囲を撮影し、事前に見ておけば作業計画を立てやすいのではないか、などと思うが、当然そんなことは出来得る範囲で全て行われているだろう。今回は失敗が許されない国民の負託を背負った任務であるから、ベテランほか最も優れたメンバーでチームが組まれているに違いない。  

 会見にもあったが、放水車をどこに停めて、ホースをどのように引き回し、実際に水をはき出すかはその場に立たねば判断できない。あらかじめ考えられ得る人員配置や役割分担、そして被ばく量の取り決めなどは行ったろう。
 
 そしていざ現場に立てば、いちいち本部や役人に無線などで確認し、承認を得ながら作業を進めるような時間的猶予はない。被ばく量を最小限に抑えるためであるし、火事や災害では最前線に立つ者は自己の判断を信じて体を動かすように訓練されていよう。

# 

 現場で命懸けの作業を行うのとは対照的に、福島原発の事故処理で、政府の対応やパブリックアナウンスメントは非常に頼りないものだ。だがこれはある意味で想定の範囲内ともいえる。3月11日以前に我々が置かれていたのは、回復のシナリオがどうにも描けないでいた経済不況下である。どうして経済的なピンチを乗り越えられないものが、深刻きわまる原子力発電所の放射能漏れというこれまでにない大ピンチをうまく解決できようか。地震、津波、原発事故の前に、既に政府は機能不全、思考停止に陥っていたのだ。  

 危機的な状況下においては、迅速かつ的確な判断をまるでピアノの鍵盤を高速で押し続けるがごとく、次々に打っていかねばならない。しかも滅茶苦茶に打刻すればよい訳ではない。全ての音が万全ではないにせよリズムをもって、きちんとメロディーを奏でなくてはならない。メロディーにならないということは、一音一音が有機的に連なっていないということだし、一音打った後の一音には意味がなければならない。子供でもただ闇雲に急いで鍵盤を押すことはできる。しかしメロディーにはならない。ジャズのアドリブに近いことをせねばならないのに、まったくそれが出来ていない。いまや、ほとんど全ての人が政府の発表を信じていないのではあるまいか。  

 官房長官の「ただちに健康に影響を及ぼすものではないので安心して下さい」という台詞には、憤りを覚える。「ただちに」でなければいつなのか。国民の生命を蔑ろにするのもいい加減にしろ、と言いたい。  

 放射線の恐怖は、浴びるだけでなく、風に乗って飛来する大気に含まれる放射性物質を呼吸で吸いこむこと、呼吸や食物を通じて体の内部に取り組んで体内被曝すること、が怖いのだ。CTスキャンに比べて何倍だとか、何分の一だとか欺瞞に満ちたレトリックでごまかす段ではない。  

 仮に誰かが1ヶ月後に、1年後に、10年後に癌で死んだとしよう。タバコを吸っていたから癌になったのか、癌家系だったからなのか、はたまた福島原発の放射能漏れに拠るものなのか、誰が判別できるだろう。おそらく誰もできない。仮に因果関係を立証できたとしても、それには膨大な歳月と努力が必要なことを、我々は戦後の公害事件で知っている(水俣病訴訟の最後の和解がつい先日なされたことがそれを雄弁に語っている。一体何年経ったというのか)。

 また仮に、福島原発から出た放射線、放射能物質が死因になるとして、責任を取るのは東京電力なのか政府なのか。死の酬いを支払うのは誰になるのだろう。東電も政府も責任を十全に引き受けるような気がしない。原子力災害補償制度によって何がどの程度救済されるのか、未知数と言わざるを得ない。  

 ここでも『自己責任』という世に広まりつつあった奇妙なフレーズが適用されようとしている。

 我々は二度死ぬという図式がもう既に出来上がりつつあるのかもしれない。
PR
 引き受けなければならないことの重みに戦きながら、かといって何ができる訳でもなく手持ち無沙汰な連休。  

 人間というのは非常に矛盾を抱えた存在で(大きなる自己弁護!)、こんな状態でもかたや恐怖を携えながら、一方で食う寝るだけでは満足できない。我欲と言われればそれまでだ。

 ●

 ハービー・ハンコックの演奏をYOUTUBEで検索していて、思わずこのDVD(Cantelope Island)をamazonで購入してしまった。ハービーの歴史はマイルスチームへの加入に始まり、以降実に振れ幅が大きく、とても面白い。才気煥発。個人的にはその紆余曲折というか変節、よくいえば進化の道程が長渕剛と似ているような印象を持つ。つまり、常に大衆に受け入れられることを希求していて、時代の流行に敏感、機を見るに敏。

 一枚もアルバムが売れなくとも己が作品世界を追求する、なんてスタンスではない。貧乏長屋で清貧の生活を送りながら誰にも理解できない抽象画を一生描き続けることを、明確に拒絶する。ある意味でポピュリズムを体現しているのだ。聴衆の十歩も二十歩も先ではなく、半歩先を提示するのに長けている。だから今日に至るまでの来歴は一見、一貫性がなくて分かりにくそうで、しかし決して分かりにくいことはない。

 こんな人生を生きれたら面白くて仕方がないだろうな、と思わせるのがハービー・ハンコックだ(信濃町方面の話はあえて置いておく)。
 

■Cantelope Island
Dave Holland on bass
Herbie Hanock on piano
Pat Methany's playing guitar
Drummer is Jack DeJohnette


 
■Tribute to Miles



■Rockit 1985
 我々人類の歴史は、何万年とあるのだろうが、記憶に留められる範囲として紀元前と紀元後とに分けられている。キリストの誕生以前と以後で区分している。それくらいキリストが生まれる前と後では歴史が違うということなのだろう。
 
 今回、東北を中心に関東に至るまでの広範囲を襲った大地震と津波、そして原発事故。かつてこれほどまでの苦難を日本人が味わったことがあるだろうか。戦争に負け焦土と化した後、
GHQの占領統治を経て高度経済成長を果たして見事、復活を遂げた。バブルで饗宴を楽しみ、そのツケとして後の10年を失ったりもした。御巣鷹山の飛行機事故やオウム真理教によるサリン事件など歴史の転換点となるような様々な事件が発生し、人名の犠牲を払いながら、それでも何とか乗り越えてきた。
 
 だがしかし、未曾有の大災害と深刻きわまる原発事故を同時進行で経験するとは一体誰が予想したろう。『国難』と表現する向きもあるが、これはもはや二つの敵との戦い、『戦争』だ。いくら丁寧に高性能爆弾による爆撃を加えても、あんなに効率よく短時間に、街を綺麗に消し去ることはできやしない。猛烈な勢いで援助活動を行っても、失われた命の数はもはや天文学的なものだ。自然の猛威の前に、ただ茫然と立ち竦むほか手立てがないというのか。

 そして余震はいつやってくるか分からない。また放射能は目に見えず、恐怖は高まるばかりだ。さしたる前触れもなく、生命や財産が失われ、脅かされる事態が唐突に用意された。
 
 おそらく我々日本人にとって、今回の艱難辛苦が再び歴史を分かつ。これ以前と以後でまったく違ったものになってしまっただろう。
 
 まだその事実を受け入れる心の準備ができていない。

※書影にamazonへのリンクを貼付しています

●『ローコストでいい音を』=P178~189

評論家の和田博巳さんと6システムを試聴。

・SYSTEM1:《吉田苑》CR-D2 LTD-Z(¥64,800)+《デノン》SC-F107SG(¥49,350)ほか

・SYSTEM2:《エアボウ》SINGINGBOX3(¥120,000)+《B&W》CM1(¥121,800)ほか

・SYSTEM3:《ケンブリッジオーディオ》Azur350C(市場価格¥50,000前後)Azur350A(市場価格¥50,000前後)+《モニターオーディオ》Apex10(¥105,000)ほか

・SYSTEM4:《プロジェクト》Pre Box(¥57,750)Amp Box Mono(¥84,000ペア)CD Box SE(¥120,750)+KEF(¥69,300)ほか

・SYSTEM5:《ニューフォース》Icon HDP(59,850)Icon Amp(¥27,300)+《オッポ》BDP-93 Nuforce Edition(¥99,750)+《イクリプス》TD508Ⅱ(¥88,200)ほか

・SYSTEM6:《エヌモード》X-DP1(¥149,000)+《マランツ》SA8004(¥100,000)+《フォステクス》PM0.4n(¥21,840ペア)ほか
プロフィール
HN:
なし
性別:
男性
自己紹介:

powerd by


最新コメント
[08/15 yrndmifoaj]
[08/15 ekckyuobwa]
[08/14 clqoizbepn]
[07/19 azart47]
最新記事
最新トラックバック
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター


お天気情報
フリーエリア
建築家の設計による狭小住宅からブログ発信中。
地下の書斎でオーディオを
愉しみ、音楽はなかでも特にJAZZ(ジャズ)を聴きます。

《お知らせ》直近の雑誌寄稿
→左記、カテゴリー《メディアへの寄稿》からご覧下さい
-------------------------------
///聴かずに死ねない!JAZZライブ盤。現代JAZZの、ある到達地点に違いないです///

The Winners/Live at the Dolder Grand Hotel, Zurich
●詳細はこちらから(amazon)
The Winners/Live at the Dolder Grand Hotel, Zurich/TCB/2001

-------------------------------


M's Bar/男の書斎・別室

M's Bar/男の書斎には、クルマやテニスなどの話題が中心のもう一つの別室ブログを設けています。
バーコード
Copyright © デザスタK【オトナの教養ラジオ】 All Rights Reserved.
Powered by Ninjya Blog / ブログテンプレート by naminorito
忍者ブログ [PR]
[PR]Samurai Sounds