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コニシス190602

 レフィーロ&アネーロでコニシスの新製品TYR1213、1214の試聴会が行われたので参加した。去る5月のハイエンドショーでお披露目し、人気を博したTYR1213、1214がついに発売を開始する。例の“赤いきつね”ならぬ“赤いアンプ”を作るコニシスである。前述のコニシス訪問時の試聴環境とは違って、レフィーロは完璧ともいえるルームアコースティクが施された“お部屋”である。こんなオーディオルームで音楽を聴くことができる人が日本に何人いるというのだろう。最高のシチュエーションで気になる製品を試し聴きして、いざ購入し自宅の“ウサギ小屋”みたいな6畳半の狭いスペースで音を出したら、“おい、この間聴いた音と違うでないの”とつい文句を言ってしまいそうである。何にしてもレフィーロの試聴部屋は、QRDの小難しいフラクタル関数を駆使した音響拡散パネルをふんだんに設置し、天井は上手い感じで凸凹が設けられるなど随分と手が込んでいる。


 小西社長の司会進行のもとTYR1213と1214の音出しが始まる。当たり前かもしれないが、学芸大学の地下作業場で聴いた、解像度が高く透明感の溢れる音に変わりはない。録音モニター機の性格で、原音ソースへの余計な色付けはない。一言で言うと、僕はこのコニシスのアンプは、「実存感」のアンプであると思っている。ハイデガーやサルトルの実存主義アンプ。今ここに“ある”ということ、をこのアンプは最重要視している。
時にスタジオで録音作業をしていると、10時間とか20時間という長時間に渡ってミュージシャンが奏でる音を聴き続けることになるという。耳疲れ、聴き疲れをするアンプでは仕事にならない訳だ。また、歪みがないこと、位相が正しいことも重要だという。録音した生音にミキシングコンソールを使って、リバーブをかけたり、更に高音を伸ばしたりと“加工”を施しては、音を再生し確認する。


 よく巷で“原音再生”などということが言われる。正確に言えばCDやレコードなどのパッケージとして商品となったソースを原音として忠実に再生するという意味で“原音再生”なのだ。“本来の音”とはもちろん、コンサートホールや録音スタジオで演奏された音そのものであり、次の段階ではレコーディングされたマスターテープの音であって、加工された商品としての音ではない。つまり我々が手にするパッケージメディアは既に原音ではなく、加工が施された音であって、これがオーディオ再生における“原音”である。決して“生音”ではない。ソニーロリンズがそこに居るように音を再生したい、というのは録音された生音に手を加えた加工音を持ってして、擬似的にまるでそこでテナーをブローしているように感じるというだけで、これはあくまでも脳の錯覚認知機能を使って雰囲気でそう感じるということなのである。オーディオ装置で音を再生する時に、何をして“原音”かということは重要である。CDやLPの音が原音なのである。

 
 さて、話はそれてしまった。コニシスのTYRである。小西さんが気を配っていることに“低域の制御力”というものもある。スピーカーの振動板を、特に低音域でビシバシ統御するということだ。止めるべき時に止まる低音を目指した。これがゆえに、DCアンプを採用している。トランスを排除し、逆起電力を追放したのだという。僕は馬鹿でかいトランスを積んだ長方形デカ弁当箱式アンプが苦手なので、厚みが薄っぺらいアンプを見ると、“おお、巨大なトランスを積まないように工夫を凝らしているなあ、よしよし”と思ってしまう。更に上記機種であるCL-1やCL-2ではミリタリーグレードの部品を搭載するべく、自衛隊向けの部品メーカーへ発注したとかしないとか。やはり、研究所を社名に冠するだけのことはある。完璧な再生装置など存在しないが、“いまそこにある”ように音を鳴らすコニシスアンプは、アンプ製作者のスタンスとプロダクトがともに明瞭かつクリアーである。



●続きはこちら↓
<6月10日付けブログ>
コニシスアンプとウィルソンスピーカーの邂逅


●過去のブログ↓
<6月3日付けブログ>
コニシスについて




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フォーカルJMラボ_Micro Utopia Be

 艶っぽく、コンクリート打ち放しの大空間で響いているような音色を持つ。ベリリウムという特殊であろう金属の仕業なのか。トゥイーターの振動板素材として採用しているのだという。日本のオーディオメインストリームにあるメーカーが奏でる、透明で明晰かつ現実的だが、何か音に味付けを加えることが“悪”であるような潔癖さに比べれば、このフランスのスピーカーはややもすると、やらしくてセクシーな音を出す。水も滴るというか、“濡れた”感じを受ける。さすが大人の国フランスからやって来ただけのことはある。先日の仏大統領選挙で勝利したサルコジ氏だが、奥さんは半年前にどこだかの国の実業家と駆け落ちして半年間、家を留守にしたそうだ。苦悩する様子の彼は「フランスのどの家庭でも起こりうることが自分に起きた」とコメントし、国民は大統領の卵に親近感を持ったという。かつての政敵は、「家の中で妻をつなぎとめておくような魅力もない者に、市民を魅了することができるのか」と手厳しい。政治の中にセクシャルなことを含んだって、パリッ子(パリだけでないだろうけど、パリという言葉は何だか洒脱で自由を謳歌する印象を持つ都市の名だ)には「エ・アロール」とばかりにそれがどうしたといきり立つこともない。そんな国柄からすれば、肉感触のちょっとエロティックな音色がふさわしいのかもしれない。

 Micro Utopia Beのセクシーサウンドを人によっては、余計な装飾をしていると指摘する人もいるかもしれない。しかし、音楽を聴くことは非日常の、日常のあれこれ由無し事を忘れて没頭するためだと考えるなら、このスピーカーはとてもマッチする。
 数万円のミニコンポで音楽を楽しみたいというなら、別に“ケ”を求めている訳でもあるまい。そこに“ハレ”を希求するからこそ大枚をはたくのではないか。
WILSON AUDIO_SYSTEM8

 ウィルソンオーディオのシステム8は、ペアで約400万円という庶民感情を逆撫でする価格のスピーカーである。例えば、車を例にとってみよう。ホンダシビックが250万に対して-それにしても、何故ゆえシビック(※5月29日付けブログ)を高級車にしようというのだろう。シビックはコンパクトでこなれた金額で、それでいて都会的な洗練とか若々しい軽快さがあったゆえにシビックだったのだ。250万もするのなら、もはやそれはもうシビックではなく、ほかの違う車種ではないのか。シビックをレジェンドに近づけても、それはレジェンドみたいな車というだけで、シビックではないのに、などとホンダびいきの僕はつい思ってしまうのだが-、フェラーリをだいたい2,500万とすれば、その差は10倍だ。車の世界では、一般向け製品と一部の金満家やレーシーな志向を持ったプロフェッショナルに向けたプロダクトは10倍しか価格差がない。翻ってことオーディオでは、ミニコンポを仮に10万円としたら、スピーカー単独400万との単純比較でまずは40倍だ。しかもスピーカーだけな訳だから、それに相応しいコンポーネントとなれば100倍ということも当然見えてくる。何がいいたいかと言えば、とにかく高くてたまらないということだ。

WILSON AUDIO_SYSTEM8_インターナショナルオーディオショー2006

 しかし、当然ながらシステム8の実力というのはずば抜けている。昨年の10月、インターナショナルオーディオショーで「紅の豚」ならぬ「紅のシステム8」を聴いた時には、ある種、宗教の次元にまで達してしまったような感すら受けた。宮崎駿の息子が監督を務めた「ゲド戦記」のテーマ曲“テルーの唄”がかかると、対のスピーカーの上に、すうっと幽体離脱した手嶌葵がまるでステージの上から椅子に腰掛ける我々に歌いかけるという印象だった。そのポジションはある意味で宗教的でさえあった。デザインも良い。アメリカのオーディオ製品というと、マッキントッシュ、JBLほかジャズやロックのガッツを打ち出すことを重視した、いわば押しの強さというイメージがあって敬遠していた。車ならばアメ車は馬鹿でかくて阿呆みたいに燃費が悪くて(さんざんな言われようだけれど)、ヨーロッパ車は合理的でキャラクターの立った小型車が得意と大まかに種別されるが、ウィルソンオーディオは僕のアメリカオーディオ嫌いを覆した。
 
 ウィルソンのカタログを見ていたら本社はユタ州とあって、もしやモルモン教徒では、という読みはあたっていた。と考えると納得がいく気もする。低域を重厚に出す、高域を何が何でも伸ばすという印象がないからだ。上下に欲深く頑張り過ぎていないから、迫って来る音ではない。肉食欧米人種というよりは、スーパーサウルスほど巨大化はしていないけど、それなりの図体の草ばかり食べて大きくなった草食恐竜みたいな存在だ。
マイクロ_BL-91 

 レコードプレーヤーはマイクロ BL-91を使用している。どのメーカーのプレーヤーにするか相当迷いました。現行のデノン DP-1300MKⅡやらテクニクス SL-1200MK4やらには正直あまり関心がなかった。ちょっとイージー過ぎる、アナログ特有のセッティングを詰めるのに適していないと思ったからだ。 かと言って、トーレンスのReferenceやガラード301、トーレンスTD124Ⅱの中古に大枚叩くというのも、いいタマはそうそう見つからないであろう、ということでパス。 かなり真剣に検討を進めたのは、ROKSANのRadius5のアクリル仕上げとミッチェルエンジニアリングのGyroSE。 ともに30万以下の価格帯であったことと、レコードプレーヤーに重要な「見た目の機構のカッコよさ」を鑑みてのこと。 だが、じゃあこれを買おうというところまで至らなかった。何だか腑に落ちないものが心の中にあった訳である。 

 これはシステム全体の話にもなるし、改めて別に記さないといけないと思っているのだが、僕はコンポーネントの組み合わせをを頭の中で空想で組み上げながら、試行錯誤を繰り返すうちに、欧米列強製品がのしているオーディオの現況において、「FROM JAPAN」の製品でまとめあげてみようと思い始めていた。 「重量級の装いで、堂々とデジタルに立ち向かったアナログの武将」とマイクロのSX8000 Ⅱ Systemを柳沢功力氏はステレオサウンド誌で評した。「アナログの武将」なんて、ちょっと笑ってしまう表現ではあるが、伝えたいことは分かる。マイクロのプレーヤーはどれもマニアックでアナログ全盛期の熱さとかパッションが伝わって来る。 そのプロダクト群の中で、チョイスしたのはマイクロBL-91であった。デザインが秀逸である。RY-1500シリーズ(RYはモーターユニットの型式ですが)に代表される砲金の分厚いターンテーブル。ディスクを吸着させる真空バキュームユニット。どれも往時のレコード再生の魅力に溢れた技術の工夫がある。 

 そして、僕はオークションでトーンアームのMA-505とともにBL-91を手に入れた。BL-91のターンテーブルは金色の砲金製ではなく、銀色のアルミで2.8kgある。手中にしたプレーヤーには真空ユニットは付属していなかったけれど、状態がとても良くすっかり気にいっている。BL-91のシンプルだが気品と威厳に満ちていて、かといってtoo muchでない佇まいに、今の製品にはないユニークさを感じるのだ。
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