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190808

 今日は休みだったので昼過ぎに起床した。『ワルツ・フォー・デビー』とか『お城のエヴァンズ』なんかをCDでしばし聴いて、夏の暑さをやり過ごしていたら、腹が減って来たので自転車で外に出掛けた。

 家人のチョコレート色のルイガノを借りた。泥除けにスタンド、そして籠まで付いている。クロスバイクやオンロードバイクのように余計な装備は要らないという訳にはいかないのでママチャリ仕様の自転車としたのだ。善福寺公園や吉祥寺へ散歩がてら向かうのに使ったり、普段、スーパーへ買い物に行くのに乗ったりする。ご丁寧に名前まで付けた。ナミコ。漢字にすると『並子』である。杉並区からインスパアを受けて命名した。

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 『並子』に操られて、荻窪の駅前まで来た。彼女はいい女だ。乗るのに肩に力を入れる必要もなく、ツッカケを履いてカジュアルに乗ることができる。教会通りにある『フェリスフー』という店で夏野菜の入ったカレーでも食べようと思ったが、開店していなかった。行く宛てもなく、何となく『並子』を漕ぎ始めると、すぐに杉並公会堂の前へと到る。そういえば、完成してから中に入ったことことがなかったなあ、と思って彼女を敷地の端の街路樹に括りつけた。

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 さすがに竣工してから一年足らずだけあって、外観だけでなく内部もとても綺麗だ。大ホールへと上がる階段にはテープが張られて行く手を阻まれている。仕方なしに、地下の小ホールに向かう。クラシックの音色が聴こえて来る。手にしたパンフを見ると『女性作曲家音楽祭2007』と銘打って、平日の昼間に低料金でコンサートを行っているという。ちなみに今日の演奏会は二千円だった。よっぽど鑑賞していこうかと思ったのだが、飯をまだ食べていなかったことを思い出して、外へ出た。『並子』の縛られた縄を解いてやっている時に、警備員がやって来た。

「ここは駐輪禁止です。自転車置き場に停めて下さい」

 機械的な物言いだった。
 
「あー、そうでしたか。初めて来たので分からなかったのですが、どこかに書いてあるんですか」

 そういって僕はあたりを見回した。この杉並公会堂の敷地へチャリリンと進入する際に、そんな案内掲示は見当たらなかった。

「あそこに書いてあります。ここにも」

 メカニカルな警備員さんが指し示したのは、ひどく遠慮がちな小さな立て看板と公会堂の平面図を記したガラス板だった。

「いや、ちょっと待って下さいよ。目立たない看板と1メートルの先からも判読できない地図でもって、駐輪禁止とは認識できないし、自転車置き場も何処だか分からない」

 いや、確かにあの看板に書いてあるから、自転車を置いてもらっては困る。いや、あれでは老若男女、誰もが分かるなんてことはない。下らない応酬をしていると、品のいいおばちゃんが『並子』の後ろに、自転車をささっと停めた。

「ここは駐輪禁止です。自転車置き場に停めて下さい」

 鸚鵡返しだった。

「コンサートのチケットを一枚買って、すぐに戻るけど」

「いえ、ここは駐輪禁止です。自転車置き場に停めて下さい」

「はいはい、分かったわよ」

 言うが早いか、動かすが早いか、瞬間的にこの場所の自転車駐輪に例外は存在しないことを悟った様子だった。頭のいいおばさんだ。だが、最後の科白には、別に悪いことをしている訳でなし、なぜそんな言い方をされなければならないのだ、という軽い怒りのニュアンスが含まれていた。

 僕はやむなく、館長さんにご挨拶することにした。警備員さんと議論をして、職責以上のことを具申したって、それは彼にも答えようがないからだ。

 僕は名前を名乗った。意見をする時に名無しの権兵衛では、卑怯に違いないと思うからだ。

「自転車を停めさせたくないというのは、不法駐輪を防ぐためと理解するが、ここは杉並公会堂という名前からして公共の施設なのだから、誰しもが分かるように “ここは駐輪禁止で、建物裏手の地下に駐輪場がある”と知らせるべきではないでしょうか。もう少し工夫した表示、案内誘導をはかるべきだと思いますよ」

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 こういうことをすると、つまり正論にせよ、イチャモンにしても、物言う株主みたいに感じるのだろうが、家人はことのほか嫌がる。時には逆に猛然と怒られたりする(今日は帯同しておりませんでした、ふぅー)

 そしていつも同じことを思う。別に事を荒立てようとか、自分を誇示してやろうというよりも、その言い方はないだろうとか、そりゃナンボ何でもあまりに強引でしょうということに、目一杯腹が立つだけなのだ。そして、それを言わざるを得ない。随分と損をする不器用な生き方だと思うこともある。

 しかしながら、まあ誤解されることも恐れずに言えば、公空間におけるサービス提供側のコミュニケーションスキルの低下はそこかしこで見受けられる。質が下がっているなと感じる場面は、何も上述に留まらない。民間に委託しその質を維持しようとする取り組みはあって、一定の評価に値すると思うのだが、「機械的な物言い」の背後には「とにかく言われたことだけやっておけばいい」という時代精神と、「サービスを受ける側の理屈や感情など、どうでもよい。とにかくこちらの理屈に従ってさえいればいいのだ」という銀行などにもみられる傲慢さが見え隠れする。

 世知辛い世の中ではある。


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 一昨日飲んでいる時に、ランボーの詩集はわけが分からなくて結構面白いと言ったら、“あー、シルベスター・スタローンね”と冗談で返された。確かに「ランボー」とWebで調べると、『怒りのアフガン』ばかりだ。「ランボー」といえば、早熟の天才ホモ詩人というよりも先ずはスタローンとなると、仏文を出た人や彼の詩を読んで青春を過ごした往年の方には、まったく何だかなあ、という気分になるのではないでしょうか。どうでもいいことなのですが。


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民間委託というお役所仕事
itsunireさん、お腹立ちはごもっともです。私はこの一年の間に小ホール6回、大ホール一回も使用しました常連客ですが、毎回ホール側の対応には呆れます。特にガードマンの対応が内部を鏡のように表していますね。杉並区民としては、公会堂建設の経緯があまりにも不透明ですが、税金還元?の一環として使用することにしました。しかし、、
このページを読むと経緯が解ります。http://www.horibe-yasushi.com/Aaa/20030601.htm

ところで、リンクありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
GRFの部屋 2007/08/09(Thu)17:30:23 編集
杉並公会堂
なるほど。

しばらく前の区長選の折に、駅前で立候補者氏がビラを配って、だから現区長はおかしいのです、と訴えていたのを思い出します。
私はその演説を聞いて、杉並区は随分と財源に余裕があるのだな、良きことかな、などと受け流していましたが、お送り頂いたサイトほかを見ると、これは将来かなり困ったことになる可能性を多分に秘めていますね。

お知らせ有難うございました。大して区政には興味もなかったのですが、少し関心が出ました。

最高級の音響施設とのことですので、区民としては利用(私にとってはコンサート鑑賞)しない手はないですね。

まさか『8時だよ全員集合!』の会場とするという訳にもいかないでしょうから。。。


ITSUNIRE 2007/08/10(Fri)01:26:47 編集
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